
はじめに
建築士としてキャリアを積みたいと考える中で、「転職したいけど難しいのでは…」と思う方は少なくありません。建築業界は専門職であるため、一般的な転職市場とは少し勝手が違います。今回は、年齢別・資格別に建築士の転職戦略を整理し、転職を成功させるためのポイントを解説します。
1. 建築士の転職は本当に難しいのか?
結論から言うと、建築士の転職は年齢や資格、経験によって難易度が大きく変わります。
- 20代前半〜30代前半:実務経験が浅くても、意欲とポテンシャルを重視されることが多いため転職しやすい
- 30代後半〜40代:管理職経験やプロジェクトリーダー経験がある場合は有利。ただし、未経験分野への転職はややハードルが上がる
- 50代以降:豊富な経験は評価されますが、給与水準や定年の問題もあり転職先が限られる傾向
建築士資格の有無によっても大きく影響します。資格は専門性の証明となるため、特に一級建築士は管理職ポジションや設計責任者としての採用で有利です。一方、資格がない場合でも、CADスキルや現場管理経験などで補えるケースもあります。
~筆者の経験から~
建築士資格を持っていたとしても建築士業務(設計・監理・確認申請など)の経験が無い場合、建築士としての転職は厳しいものになる可能性があります。
私は一級建築士を持っていたので、一級建築士として働きたいと思い転職活動を始めたのですが、施工管理の実務経験しか無かったため、建築士として採用していただける所は少なかったように感じました(一級建築士が評価されてPMや施工管理職としての採用は多くいただけました)。当時20代であったためポテンシャルを評価していただき、構造系の設計職に転職することが叶いましたが、もし30代・40代で建築士業務未経験となると、建築士としての転職活動は難航していただろうと思います。
2. 年齢別の転職戦略
20代〜30代前半
この年代はまだキャリアが柔軟で、経験が浅くてもポテンシャル採用が狙いやすいです。
また、転職界隈は実務経験がモノをいう世界のため、違う分野に挑戦することも非常に重要です。ポテンシャル評価でどんな職種でも転職のチャンスのある20代~30代前半の方は、今後のキャリアを見据えて、経験しておいた方が良いと思う職種にトライするのも転職戦略の一つだと思います。
- 戦略ポイント
- 幅広い職種に挑戦する:設計だけでなく施工管理や現場監理も視野に
- 資格取得を目指す:二級建築士や一級建築士の取得を同時に進めると採用時の強みになる
- 転職エージェントを活用する:未経験分野への挑戦でも企業紹介が受けやすい
30代後半〜40代
キャリアの方向性がある程度固まる年代です。管理職経験や大規模プロジェクト経験が転職のカギになります。
ある程度社会経験をしてきている30代後半~40代では、ポテンシャルで採用されることがほとんど無くなります。この年代の方に企業が求めるものはその職種の即戦力かつエース的な役割の方だと考えて差し支えないでしょう。
自分の専門分野は何か、強みは何なのかということを正確に自己分析して転職に望む必要があります。
- 戦略ポイント
- マネジメント経験をアピール:チームリーダーやプロジェクトマネージャー経験を履歴書・面接で強調
- 専門分野に特化:構造設計、設備設計、住宅設計など、自分の強みを明確化
- 条件交渉を意識:給与や勤務条件は経験値に見合った交渉が可能
50代以降
定年や年収の制約を意識する必要がありますが、豊富な経験は評価されます。
最近では、65歳が定年の企業であったり、定年再雇用の制度が一般的になり、50代でも長期で活躍できる環境が整ってきています。そのため50代以降での転職も企業から必要な人材と感じていただければ採用となるケースも多くなっていると見えます。
また、50代以降の転職では、実務経験はもちろん資格を持っていて当たり前という風に見られがちなため、資格を持っていない方は非常に不利になりがちな傾向にあると思います。
- 戦略ポイント
- コンサルタントや技術顧問などの職種も検討
- フリーランスや個人事務所での仕事も視野に入れる
- 「即戦力」として短期プロジェクトや特定分野での活躍をアピール
- 謙虚な姿勢で、まだまだ仕事にひたむきに取り組めるという気持ちをアピール
3. 資格別の転職戦略
一級建築士
一級建築士は建築業界で最も需要が高く、給与やポジションも有利です。また、下記のほか二級建築士の範囲も対応できるため、多くの選択肢を得ることができます。
- おすすめ戦略
- 大規模建築や公共案件を扱う企業にターゲットを絞る
- 設計責任者やプロジェクトマネージャーとして応募
- 管理職経験があればさらに交渉力が高まる
二級建築士
二級建築士は住宅や中小規模建築に強みがあります。
二級建築士も建築士の独占業務(設計・監理など)が可能なため、企業から求められることが多く、無資格者と比較すると非常に大きなアドバンテージとなります。
逆に言えば、住宅や中小規模建築を取り扱う企業では二級建築士があれば十分のため、一級建築士で在る必要は無いため、二級建築士が最大限評価される環境といえるでしょう。
- おすすめ戦略
- 注文住宅メーカーや工務店、リフォーム会社への転職が中心
- 設計だけでなく、施工管理や営業との連携経験をアピール
- 資格取得を目指して一級建築士挑戦を見据えるとキャリアアップにつながる
無資格(実務経験のみ)
無資格でもCADスキルや現場管理経験があれば建築士業務を補佐する立場に転職可能だと思われます。建築設計や監理の補助者で無資格者の方は意外と多くいらっしゃいます。
- おすすめ戦略
- CADオペレーターや施工管理補助など実務経験を活かせるポジションを狙う
- 資格取得を目標に、在職中に勉強を進める
- フリーランスや小規模プロジェクトのサポート職も選択肢
4. 転職を成功させるための共通ポイント
- 履歴書・職務経歴書のブラッシュアップ
経験したプロジェクトの規模や役割、使用ソフトや資格を具体的に記載すると採用側に伝わりやすい - 転職エージェントや求人サイトの活用
建築士専門のエージェントは非公開求人や条件の良い案件を紹介してくれる - 面接準備
プロジェクト経験や設計方針、過去の成功事例を具体的に説明できるように準備 - ネットワークの活用
業界内での口コミや紹介も、意外と転職の大きな武器になる
5. まとめ
建築士の転職は、年齢・資格・経験の組み合わせによって難易度が変わる専門職です。若手はポテンシャル採用、30代以降は管理職や専門性の強みを活かす戦略、50代以降は即戦力やコンサルタント的な職種が有効です。
資格別に見ても、一級建築士は大規模案件・管理職向き、二級建築士は住宅・工務店向き、無資格は実務経験やCADスキルを活かす戦略が中心です。
転職を成功させるには、自分の強みを整理し、応募先に合った戦略を立てることが何より重要です。年齢や資格に縛られず、キャリアの幅を広げるために、今からでも準備を始めてみましょう。


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